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楽天撤退でも前年比1.7倍!北欧雑貨店のSEO戦略

北欧雑貨を販売する『北欧、暮らしの道具店』は、2007年にネットショップをオープンして1年3カ月後、楽天市場にも出店した。「やると決めたら、徹底する性格」という経営者兼プロデューサーの青木耕平氏は、出店後、半年間で700万円近くの広告費を投じて集客に精を出した。おかげで、月に300万円ほどの売り上げに達し、売り上げ全体の35%を占めるまでになった。
しかし、出店した翌年には、すでに強い疑問を感じながら運営していた。

「やはりというか、楽天市場に出店してメリットがあるのは、大量に仕入れてそれを安く販売できる粗利率の高いお店だったんです。例えば花粉症の時期になると、空気清浄器は確実に需要が見込めますよね? そういう商品を、ベストなタイミングで大量に仕入れ、多額の広告費を投じて一気に売りさばくタイプのお店なら、向いていると思うんです」
前回でも紹介した通り、同店の平均客単価は1万円前後。「この商品、かわいいな」と思って情熱が高まらない限り、購入に結びつくことはない商材だ。多額の広告費を投じて場当たり的にお店を見つけてもらっても、空気清浄器のような爆発的なヒットは望めないのだ。
「雑貨屋って、そもそも、欲しい商品が決まってて訪れるところではないですよね。雑貨屋に行くことそのものが目的で、いろいろ見ているうちに、楽しくてこんなものを買っちゃったというのが本質です。そう考えていくと、ますます広告出稿に疑問を感じました」
北欧、暮らしの道具店
http://hokuohkurashi.com/

運営会社:株式会社クラシコム
従業員数:7名
オープン:2007年
年商  :2億2000万円

 

  • 1年半かけて楽天から撤退
そもそも、青木氏が楽天市場へ出店したのは、楽天という検索エンジンに乗せてもらえるからという明確な理由があった。ところが、実際に出店してみると、その検索エンジンのアラが目立ったそうだ。
「少なくとも僕が出店していたときは、SEO対策をすれば上位にくるシステムではなかった。せいぜい商品ページのタイトルと、キャッチコピーを拾うぐらいで、商品の説明文などはまず読んでいなかったと思います。もっとも、うちのような雑貨は、『こんな雰囲気の商品で…』と曖昧に検索する方がたくさんいますから、もともと楽天の検索エンジンとは相容れない面はあったと思います。その頃から、撤退の二文字が頭をよぎりました」
とはいえ、全売り上げの35%を占めていたのだ。撤退にあたり、不安はなかったのだろうか。
「もちろん、ありましたよ。だから、その後、1年半かけて売り上げ比を下げ、撤退月には8%まで落としました。その間、新商品は一切アップせず、1円の広告費も投資しなかったんですから、当然、売り上げは下がりますよね」
いざ撤退しても、自社サイトの売り上げに影響はなかった。撤退以後も前年同月対比170%超の成長ペースが落ちることはなかった。
「楽天市場を撤退した翌月から本店アクセス数も20%以上向上しました。おそらくポイントが使えるなどの利便性を理由に楽天市場店でお買い物していたお客様の多くが、本店に足を運んでくださったのではないかと推測しています」

 
  • コンテンツの充実こそがSEO対策
現在、自社サイトにかける広告費はリスティング広告などで、売り上げに対して3〜4%程度。かなり少ない。それは、先にも述べた通り、自社で扱う商材が、衝動的に買うタイプのものではないからだ。
では、どのようにお店を広めているのだろうか。
「検索エンジンのキーワード対策がメインですね。今、Googleで『北欧』や『北欧雑貨』というキーワードを入力すると、2番目ぐらいには表示されるんです。でも、これは、特別に何かしたというわけではありません。コンテンツの量が豊富なのが、非常に有利に働いていると思います」
「北欧、暮らしの道具店」の総ページ数は、現在、1万ページ以上に及ぶ。オープン当初、ヴィンテージ商品を多数扱っていたため、1点モノのコンテンツが大量に蓄積された。それが、今、SEO対策に有効に働いているのだ。
「北欧や、北欧雑貨そのものの認知度を高める必要もあると思っています。ただ、それについては、現在、全国に7店舗展開するIKEAが裾野を広げてくれています。IKEAの宣伝力は、僕らが何か仕掛けたところで足元にも及びませんからね。ありがたい存在です」
IKEAといえば、北欧どころか、世界No.1の家具メーカーだ。同じ北欧グッズを扱う立場として、脅威に感じることはないのだろうか。
「まったくないですね。ユニクロで手頃な洋服を好んで買っている人が、他の洋服屋で買わないかと言ったら、そんなはずはないですよね。それと同じです。IKEAでメインのインテリアは揃えるけれど、ここぞというときのお気に入りの雑貨は、ちょっと奮発してうちで買う。そんなふうに使い分けしてくださるお客様が多いと思います」
目下の課題は、ギフト需要を30%まで伸ばすこと。もとは15%だったが、現在までに25%弱まで引き上げることに成功している。

ギフトページ。ギフトシチュエーションよりも、ラッピングが「Step1」になっている。ラッピングだけではなく、メッセージカード、のし、大量注文など、およそギフトに関するQ&Aが網羅されている
「ギフトは、あげる人にとって義務の側面もあると思います。あげたいという気持ちと背中合わせに、あげなければならないという側面もある。雑貨というのもは先にもお話したように、これが欲しいとめがけて購入するものではありません。しかし、ある種の“義務”としてのギフトの需要が高まると、安定的な売り上げが見込めるため、弊社の経営リスクを下げることに直結します。それにギフトって、私たちのお店の存在を知っているお客様が、知らないお客様に、ラッピングした状態の実物を送るという形でダイレクトに宣伝してくれるわけですよね。つまり、新規顧客獲得に結びつく可能性を秘めていると思います」
今後も、北欧や、北欧雑貨に関するたくさんの特集を企画し、コツコツとコンテンツを充実させていきたいと話す青木さん。「サイトのメディア化」を掲げ、『北欧暮らしの道具店』は、お店のファンを増やし続けていくことだろう。(完)

情報出典: ASCII http://ascii.jp/

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